笑っていても

 

カウンセリングで初めてお会いするとき。

みなさんとても朗らかで、明るいご挨拶からはじまります。

まるで悩みなどなく、充実した日々を生きている、そんな姿。

 

でも10分、30分、1時間と、お話ししていくうちに、それぞれの心に長い間ずっとしまっていた苦しみや悲しみ、さみしさがあふれ出てくる。

涙とともに、怒りとともに、あふれ出る。

 

明るく、穏やかな口調とは裏腹に、抱えてきたものは大きい。

父親の暴力、身内の犯罪、性的な被害、DV、親からのネグレクト、親の自殺未遂...。

これまで誰にも言えずに、少女の頃の小さな心には大きすぎる、重すぎるものを抱えてきた。

その結果、大人になった今でも、自分でもわからない原因不明の不安や怒り、さみしさなどのネガティブな感情が月経前に烈火のごとく吹き出す。

そしてそのマグマのような感情は自分ではコントロール不能で、もう自分を壊してしまうしか方法がないところまで追い詰める。

 

 

傷つけられてきたはずの自分を、自分が悪いからだと今度は自分で傷つける。

自分を責めて、壊して、消えたくなる。

なぜここまで一人で抱えてしまったのだろう。

誰にも言えず、誰にも肯定されず、誰にも味方になってもらえず、ここまで抱えてしまった。

 

私のカウンセリングは、PMDD(月経前気分障害)に特化したカウンセリング。

でもその中身は、過去に遡り、縛り付けられてしまった本当の人格の解放、そして尊厳の回復。

 

日々の経験から、私は出会う人をフラットな目で見るようにしている。

その人が笑っていようと、明るく朗らかであろうと、その人が本当に幸せとは限らない。

どんな悩みや苦しみを、一人で背負っているかは誰にもわからない。

 

人それぞれ、背負う悩みや苦しみは違う。

「自分よりもっと苦しい人がいる」と、人と比べてしまうことで、自分の苦しみをかき消して、忘れようとすることも、実はとても多い。

これは、指先をやけどして腫れてすごく痛いけど、全身をやけどした人よりましだから我慢しなきゃ。

そう思っているのと同じだ。

そうこうしているうちに、やけどした指先は水ぶくれを起こし、感染症を起こし、指を失うまでになるかもしれない。

 

人と比べて、頑張ろうと思えたり、乗り越えようと思えるなら、それはパワーになる。

しかし、人と比べて辛くなったり、もっと苦しくなったり、失うものがあるなら、それはただの障害でしかない。

 

自分の痛みを感じて、助けを求めてほしい。

自分に起きていることを感じて、痛い、悲しい、辛いと言ってほしい。

何よりも誰よりも、大切なのはあなたの感じるものだけ。

 

 

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